妥協は敗負
- 2018/06/30
- 21:02

戦いの場において安易なる妥協は、
敗負を意味します。
人生の戦いにおいても同じことです。
己れの良心に照して有害なるものは、
すべて敵として排除すべきで
安易な妥協は、決してすべきでありません。
アル中にとって、最大の敵は酒です。
従って酒とは絶対に妥協すべきでなく、
妥協するところには、人生の敗負があることを
十分ご承知願いたいと思います。
私の体験にこんなことがあります。
終戦後広島の故郷へ復員した私は、
私の家の家業である造り酒屋を手伝っており、
酒の少ない頃でも酒は自由になりました。
たまたま広島の駅前で飲食店をやっている
小学校時代の友人がおりまして、
酒に不自由しているので少し都合してほしい
ということなので、
気軽に承知し注文の酒とは別に、
その友人と一緒に飲もうと思って
一本持っていきました。
実は、その友人も戦前は大阪におり大酒飲みでした。
それを知っていたので、
別に一本持っていったわけです。
とにかく、久しぶりだから一杯呑もうと
いうことになったのですが、
友人は「酒はやめた」というのです。
「一体、どうしたのか」と問うと
「いや、飲み過ぎてアル中になり病院に入る始末で、
苦労しました」との答えです。
その頃、私は未だアル中など
人ごとのように考えていましたので、
酒飲みの悪いクセで、
もう大丈夫だから呑め、呑めと奨めたのですが、
彼は頑として手を出さない、
そこで私も腹が立ち
「よし、俺の酒が呑めぬのなら
いま持って来た酒も持って帰る。
これまでの酒の勘定を今すぐしろ、
それが厭なら一杯でも呑め」と
強硬に出たところ彼は、こう言いました。
「児玉さん、そんなにいわれるのなら呑みましょう。
しかし、条件があります。
私が今ここで一杯でも酒を口にすれば、
あとは朝から酒びたりになり、
最後はアル中に逆戻りで入院しなくてはなりません。
入院すれば家族の面倒は見切れないし、
入院費もかかります、
そんなことを何やら彼やら考えますと、
最低三〇万の金がいります。
児玉さん、
貴方がその三〇万を今ここで私にくれるのでしたら
一緒に酒を呑みましょう」と。
このときは私も馬鹿らしくなって帰りましたが、
今になって考えてみますと、
この男は実に偉いと思います。
酒を生涯の敵として安易な妥協をしなかったわけです。
普通なら友人が久しぶりに、
それも酒まで用意して訪ねてくれたのですから、
既にアル中もなおっていることだからと、
つい盃に手がいくものです。
それをこの男は、キッパリと断ったのですから
見上げたものです。
その後、この男は再び大阪へ出て、
今では大きな料理店を経営しているとのことです。
もし、あのとき私の誘いにのって
一杯でも呑んでおれば結局、アル中に逆戻りして
生涯を破滅していただろうと思います。
安易な妥協ほど恐しいものはないと思います。
ほんのチョットした心の油断が、
安易な妥協をよぶということを
忘れないで頂きたいと思います。
児玉語録
和歌山断酒道場 前道場長
児玉正孝先生訓話集
     



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